越前漆器

高橋工芸

吹き付け塗装で漆にはない表現を。

目指すは今の時代に合ったものづくり

 

ニッチな製品からオリジナルまで製造する吹き付け塗装の工房

高橋工芸は約100年続く工房です。最初は角物の木地屋を営んでいましたが、二代目から吹き付けによる塗りの工房へと変身。今はウレタンやカシューなど化学塗料による塗装を行っています。これまで得意としてきた茶道具をはじめ、節句人形を収める箱などニッチな分野のB to B向け製品を中心に製造してきました。お客様からの「こんなものが欲しい」という相談に応じて、提案も行っています。

2018年には四代目として高橋亮成(たかはしあきのり)さんが事業を継承しました。大学進学を機に家を出てから10年間の経験を交えつつ、経営者としてベストを模索しながら動いています。その中で自社から発信したいとB to C向け製品「Ippukubox(イップクボックス)」を開発。「高橋工芸として何を提供できるのか」を考え、日々研究を続けています。

約100年の積み重ねから生まれた新しい製品。ここにしかないものを作る

以前、ひつまぶしの器の注文が入った時のこと。これまでに製造した茶道具の一つである杉八寸を応用し、試行錯誤の末、十二角形の高さを出したものを完成させました。イメージとして伝えられたのは曲げわっぱのような形でしたが、角物を得意する高橋工芸は角の数を増やして円形に近づけることを提案。強度との兼ね合いで十二角形となりました。工房に残る約100年の間に製造してきた木地や商品と、三代に渡る経験とノウハウから、若き四代目はまったく新しい商品を生み出しています。

それが出来るのも、自社内で一貫して製造しているから。下地から上塗り、さらに磨きや研ぎ、細かなパーツの組み立ては30年のキャリアを持つ職人を中心に行われます。吹き付けによる面の塗装だけでなく、シルクスクリーン印刷による柄入れも可能。多色刷りにも対応し、一つずつ手作業で行います。

化学塗料による塗りのメリットは、色の選択肢が豊富で発色がよいことです。つや消しのクリア塗料のように、漆には出来ない表現もあります。さらに高橋工芸にしか出来ないものを作ろうと、日々研究や実験を重ねています。

伝統を今の時代に合わせて変換し、次の100年を目指す

2025年に創業100周年を迎える高橋工芸。昔から受け継いできたことを、これからもそっくりそのままやっていくことは考えていないと、亮成さんは言います。今の社会や生活のあり方に対してどういう生かし方ができるのか、どう変換できるのかを考えることが、伝統を引き継いでいく上で有益ではないか。これまでの経験やノウハウを下地として、高橋工芸として今の時代に対してどのようなものが提供できるか。そんな視点でものづくりを考えています。

2022年のRENEWでは、オリジナル商品「Ippukubox」の限定モデルを出品。しっとりとした手触りは蜜蝋とオイルによるものです。これから様々な塗りの方法を試しながら、より一層木製品のよさが生きるような製品を生み出していきます。

会社情報・お問い合わせ先

文:田中 耿

 

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