越前漆器

土直漆器

-塗りから蒔絵まで自社で一貫製造できる漆工房-

漆塗りの高い技術とモダンで美しい製品づくり

2022年に創業60周年を迎えた土直漆器。1962年に現在の会長が土田直(すなお)漆器店として創業し、1980年に法人化しました。現在は15名の社員が在籍し、漆器や箸の製造・販売、漆塗りのOEMなどを行っています。

業務用漆器の産地である鯖江市河和田地区は、木地師・塗師・蒔絵師などの職人がそれぞれの工程を担当する分業制度のある地域です。分業制度が主流の産地において、土直漆器は、お椀に関するすべての工程を管理したいという思いから、自社で一貫製造を行っています。素地作り以外のすべての工程(下地、中塗り、上塗り、蒔絵)を社内に在籍する専門の職人たちが行い、自社で販売まで行います。蒔絵職人も在籍しているので、蒔絵を施すことも可能です。また、土直漆器には、伝統的「技」を伝承する一級技能士1名と、伝統工芸士1名が在籍しており、塗りの技術には自信があります。

業務用漆器が主流の産地において、個人向け商品に力を入れている土直漆器。自社ブランドをいくつか紹介します。

・「堅牢」…食洗機に対応したシリーズ。天然素材の漆がもたらす強さと美しさが特徴。
・「くるむ」…丸くかわいらしいフォルムで、スタッキング可能な組み椀。
・「ONE」…女性スタッフのアイデアで誕生した漆のワンプレート。洗い物が簡単と好評。
・「こわん」…子どもにもぴったりなかわいらしい漆器。木のぬくもりを感じます。
・「URUSHI MOBILE TUMBLER」…保温性抜群のサーモマグに漆塗りを施したタンブラー。

土直漆器の商品は、工房横にある直営店のほか、西武福井店やうるしの里会館、さらに都市部の百貨店や蔦屋書店、セレクトショップなどで手に取ることができます。タンブラーは一部のロフトでも取り扱いがあるそう。食器以外にも、名刺ケースや万年筆などのステーショナリーも製造・販売しています。

自社製品が充実している土直漆器ですが、各種OEMも行っています。土直漆器で行っているOEMは以下の内容です。

・既存の製品に漆を塗る
・オリジナル商品の製造
・ノベルティの製造

これまで土直漆器は、松葉杖、車の内装パーツ、ZIPPO、コンサートホールのドアハンドルなど様々なものに漆を塗ってきました。これだけ多様なものに漆を塗れるのは、漆塗りに特化した土直漆器ならでは。「これにも漆を塗れるの?」と気になるものがあれば、ささいなことでもご相談ください。オリジナル商品やノベルティの製造についてもお気軽にご相談いただけます。

個性豊かな職人集団による一貫製造の漆器づくり

土直漆器の強みは、以下の3つです。

①一貫製造ができ、販売まで可能な漆工房
土直漆器は、自社で一貫して漆器を製造し販売まで行います。木地以外のすべての工程を、社内の職人同士で丁寧にコミュニケーションをとりながら製造しています。特に、漆塗りの工房で蒔絵まで施せることは、土直漆器ならではの強みと言えるでしょう。また、自社一貫製造をすることで社内で工程を管理できるため、サンプルをすぐに手にとってもらえたり、納期にも柔軟に対応できたりと多くのメリットがあります。納期は、塗りであれば1ヶ月、木地からの製造であれば2ヶ月が目安です。蒔絵を施す場合は、別途お時間をいただきます。土直漆器の商品は、直営店やオンラインストアなどで販売しています。

②個性あふれる職人集団
土直漆器には個性豊かな職人が多数在籍しています。職人12名のうち県外出身者が4名おり、漆を学んできた職人や、アパレル業界出身の職人まで様々。ベテランの職人に加えて、20〜40代の若いスタッフが多いのも特徴です。ベテラン職人の伝統の技と、若い職人の新しいアイデアを融合し、現代のニーズに合ったものづくりを行っています。

③常にチャレンジし続ける工房
土直漆器では、お椀やお箸だけではなく現代の生活に沿ったものにも漆を塗っています。例えば、タンブラーやiPhoneケース、AirPodsケースなど。既存の製品に漆を塗ることで、見た目の上品さや手触りといった付加価値が加わります。社内には新しいもの好きな職人が多く、これまで経験していないものへの漆塗りも積極的にチャレンジ。未知の製品に漆を塗ることで技術の幅が広がると言います。

また、土直漆器はスタッフの「こういう商品を作ってみたい」という思いを大切にしています。業務の中で出てきたアイデアをもとにサンプルを作り、社長や他のスタッフがチェックするのだそう。自社ブランド「ONE」も社内の女性スタッフのアイデアから生まれました。今後は社内のスタッフが企画した商品をもっと売り出したいと言います。

「職人のさらなる技術力向上と産業観光に力を入れたい」2代目社長の思い

8年前に土直漆器の2代目社長に就任した土田直東(なおと)さん。大学進学を機に上京し、都内の大手レコード店でバイヤーとして4年勤務した後、2003年に福井にUターンしました。先代社長から「家業を継いでほしい」と言われていたため、もともと家業を継ぐつもりでいたそう。東京でバイヤーとして最先端の文化やトレンドに触れていた経験は、今のものづくりや会社経営にも活きているのだと言います。現在、土田社長は漆塗りだけでなく、職人育成や商品のプロデュースにも力を入れています。

60年にわたって漆塗りの伝統や技術を受け継ぎ、パワーアップしてきた土直漆器。越前漆器の産地の技術について土田社長が語ってくれました。「当社は漆塗りを得意とする工房で、漆を塗ることへの誇りや自負を持って日々の製作に励んでいます。また、当社ではできない化学塗装を行っている工房も近くにあり、金属にも塗装ができる化学塗装の技術は、今後も使えるすばらしい技術だと思います。お互いの技術を活かしてこれからもいい製品を作っていきたいです」

そして、2024年春の北陸新幹線の延伸に向けて、産業観光を強化したいと考えている土田社長。2020年7月には自社の車庫を改装して直営店をオープン。土直漆器で作られた様々な商品が店頭に並びます。産地にきたお客さんに他の工房やスポットを巡ってもらえるように、直営店が「ものづくりの輪のハブのような役割」を担えたらと土田社長は考えています。

土直漆器がある福井県丹南(たんなん)地域は、越前漆器や眼鏡、越前和紙、越前打刃物、越前箪笥、越前焼などのものづくりの産地が密集するエリア。丹南地域の工房を巡って、食も楽しんで、産地に宿泊してもらうというマイクロツーリズムの実現に向けて、土直漆器も取り組んでいく予定です。

今後は自社商品のパワーアップはもちろん、OEMも「来るもの拒まず」の精神で挑み、職人のさらなる技術アップを目指します。魅力ある商品を生み出し続ける土直漆器のこれからが楽しみです。

 

▼会社情報・お問い合わせ先
・企業名:株式会社 土直漆器
・住所:福井県鯖江市片山町6-1-2(本社)、福井県鯖江市西袋町214(工場)
・電話番号:0778-65-0509
・メールアドレス:info@tsuchinao.com
・サイトURL:http://www.tsuchinao.com/
・従業員数:15名
・設立:昭和55年7月
・問い合わせ方法:電話またはホームページの問い合わせフォームから。

(文:古川 朋香)

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