〜”心地よい和の暮らし”がコンセプト。越前箪笥の伝統を重んじながら時代に合わせた木のものづくり〜
越前箪笥の伝統を受け継ぎながら、オーダーメイド家具や木製ギフトを製作する「小柳箪笥」
小柳箪笥は明治40年(1907年)、様々な伝統産業が息づく武生のまち(現在の福井県越前市)に指物屋として創業しました。指物とは、釘などの接合道具を使わずに、木と木を組み合わせて作られる家具・建具のことをいいます。
四代目の小柳範和さんは、伝統工芸士として100年の伝統と技術を継承しつつ、時代に即したものづくりを行っています。
越前箪笥とは、欅(けやき)や桐(きり)などの材木を指物技術で組み合わせ、鉄製の飾り金具や漆塗りで装飾した箪笥です。使い込むほど味の出る風合いと、どっしりとした重厚感が特徴的。
さらに、越前箪笥の特徴は気密性にあります。受け継がれた指物の技術と原料の桐の性質によって、箪笥の中の密閉性が高まります。
桐は水に濡れると膨らむ性質があり、たとえ火事が起こっても水をかければ箪笥の中の着物は燃えずに残るという優れもの。
「火事のときは箪笥に水をかけて逃げろ」とも言われていました。このように、越前箪笥は中に入っている大切な衣類や財産を守ってきた歴史があります。
箪笥の角を保護するために付けられた金具は、猪目(いのめ)と呼ばれるハート型の金具になっており、魔除けの意味が込められています。金具のユニークさも越前箪笥の魅力。
「ストーリーのある家具づくりをしたい。収納という機能を求めるだけであれば、安価なものでいいと思うんです。越前箪笥はただの家具ではなく、家を守ってくれる『お守り箪笥』なんですよ。」
ただつくるのではなく、越前箪笥を作りつづける理由についても小柳さんは語ってくれました。
小柳箪笥では、越前箪笥、時代箪笥、桐箪笥、建具といった伝統を活かしたものづくりのほか、オーダー家具や自社ブランドの「kicoru」を展開し、箪笥作りの技術を活かした木製コースターやスピーカーといった現代的なプロダクトを製作しています。
指物、金具、漆塗りの技術を取り入れ、古き良き伝統とモダンなテイストを融合させた木工製品
①越前箪笥を作り上げるために必須の3つの技術
越前箪笥は、指物、金具、漆塗りの3つの技術から成り立っています。現在は、3つの技術すべてを小柳箪笥で一貫して行っています。100年にわたって受け継いできた伝統と技術で、越前箪笥をつくり上げます。
小柳箪笥では、それらの技術を生かしたオーダーメイドのものづくりをしています。指物技術を活用した「からくり箪笥」は、仕掛けが隠されていて工夫をしないと開けられません。
その昔、越前箪笥の中にあった金庫をただでは開けないように使われていた技術が今も活かされています。
「お客様のストーリーを作るお手伝いをしたい」という想いから、完全受注生産のオーダー家具も手がけます。ただ作るのではなく、伝統が詰まった越前箪笥も予算や要望に応じて世界に一つだけの家具に。
「洋風な部屋にも合う雰囲気にしたい」「お掃除ロボットが使えるように足をつけたい」など、依頼を受けてこれまでの常識を覆すような越前箪笥に仕上げることもあります。
娘さんの嫁入り道具としてオーダーを受けた越前箪笥は、お父さんに製作の一部を担ってもらうことを提案。
娘さんのために一生懸命、お嫁入り道具をつくった経験、お客様にとっても忘れられない出来事となったようです。小柳箪笥が家具を通じて、お客様の物語を作り出したエピソードの一つです。
②自社ブランド「kicoru」では日本の伝統とモダンなデザインが融合したプロダクトが並ぶ
木材を使用した様々なプロダクトの取り扱う自社ブランドを展開しています。「kicoru」の名は「木にこだわる」、「木に凝る」という意味からつけられました。
プロダクトデザインやパッケージもすべて小柳さんが手がけています。ここでは一部の商品をご紹介します。
縁起柄コースター
(縁起柄コースターは1枚ずつでも、セットでも購入することができます。)
日本伝統の縁起柄が取り入れられた、モダンなデザインのコースター。kicoruの中でも、手に取りやすく人気の商品です。
現在は5種類を展開しており、「青海波:平穏な暮らし」「七宝:良縁・家族円満」など、それぞれの文様に意味が込められています。
柄にメッセージが隠されているため、ギフトとしてもよろこれる一品。縁起柄を通じて、送る相手にぴったりなメッセージを選べます。会社のロゴや家紋を入れた特注品も製作可能。記念品として発注をする会社も多いそうです。
積めん木
お子様向けの積みにくい積み木で、小柳さんが一つ一つ丁寧に製作しています。お子様が舐めても安心な自然素材を使用し、誤飲しないよう大きさにもこだわっています。小柳さんのものづくりへの想いが感じられる製品です。
kicoruスピーカー
(kicoruスピーカーの写真。縦にしても使うことができます。)
越前箪笥の指物、金具、漆塗り、すべての技術がギュッと詰まったスピーカーです。
モダンなテイストは和室にも洋室にも合うデザイン。猪目の柄も使われていて、魔除けの効果が期待できそうな雰囲気です。伝統工芸と現代的な雰囲気を融合させるデザインも小柳箪笥が手掛けています。
小柳箪笥と産地のエピソード
越前箪笥の始まりは江戸時代末期から明治時代初期と言われています。武生のまち(現在の福井県越前市)は古来より刃物、指物や仏壇の産業が盛んで、金具鍛冶にも恵まれていました。
また、原料である漆や桐が採れ、箪笥を作る条件が揃っていたことが、武生のまちで箪笥が生まれた理由です。
「技術や技法をただ凄いと感じてもらうだけでなく、越前箪笥の歴史や文化も伝えたい」というのが小柳さんの想いです。
縁起柄コースターも、歴史や文化を伝えていきたいという想いから生まれました。
縁起柄は全部で5種類で、それぞれにしっかりメッセージがあります。例えば「麻の葉」は、踏まれても踏まれても真っ直ぐ伸びる。だからこそ「子どもや企業の健やかな成長への願い」という意味。
どんな縁起柄にどんなメッセージがあるのか…伝統産業に触れてきた小柳さんは、その伝統的な柄の意味をもっと広く伝えていきたいという気持ちでコースターの製作に至ったとのことです。
一つ一つの製品に対して、ちゃんとストーリーを感じられるのも、ものづくりへの熱量をもった小柳箪笥ならでは。
「伝統は技術を伝えるだけでは継承できない。新しいことを始めると批判もされるが、それが枝葉になって産地が残っていく」と語ってくれました。
型にはまらず、時代に合わせた柔軟なものづくりの姿勢が小柳さんの魅力です。取材を通して、一つ一つのものづくりに対する熱い思いが伝わってきました。
▼会社情報・お問い合わせ先
- 企業名:小柳箪笥
- 住所:〒915-0824 福井県越前市武生柳町10-7
- 電話番号:0778-22-1854
- サイトURL:https://oyanagi-tansu.jp/
- 設立:1907年(明治40年)
- 問い合わせ方法:小柳箪笥「お問い合わせページ」より問い合わせが可能です。