越前和紙

山次製紙所

社内デザイナーとつくる、山次らしさをこめた手漉きの越前和紙

 

伝統技法による越前和紙だけでなく、独自技法の浮き紙で様々なOEM商品を提供

1872(明治元)年創業の山次製紙所は、越前和紙の手漉き工房です。「和紙を現代の当たり前に」をコンセプトに美術手漉き小間紙の受注生産を行っています。中心となるのは、透かしという技法を使用した日本酒のラベル。他に引っ掛け、漉き合わせ、流し込みという伝統技法による手漉き和紙も製造しています。

また、独自技法による浮き紙を開発。当初は壁紙として使われていましたが、現在は茶缶やカードケースなど、様々な企業のOEM商品となっています。OEM商品のよさは越前和紙を知らない人のところにも届くこと。まずは山次製紙所を知ってもらい、そこから越前和紙の知名度を上げ、ブランド力が向上するようにと考えているそうです。

製紙所に併設されたショールームには、いくつものオリジナル商品が並びます。以前は自社内で製造していましたが、現在は本業である紙漉きに注力するため紙漉き以外の工程は外注しています。
しかしデザインはデザイナー経験のある紙漉き職人が担当。山次らしいと思ってもらえるようなデザインを心がけています。

デザインをプラスした職人による手漉き和紙でオリジナルプロダクトを生み出す

山次製紙所といえば、浮き紙。山次にしか出来ない、独自技法の和紙です。元々、細い線を描いたものはありましたが、壁紙の柄に出来ないかと相談を受け、試行錯誤の末に完成させました。
浮き紙は一見、エンボス加工のように見えますが、凹凸があるのは表のみ。裏はフラットになっていて、様々なものに貼ることが出来ます。また、濃淡の差によって凹凸を目立たせるため、色は後染めです。京都にある型染めの会社で着物の顔料を使用して染色しています。パントーンで色指定すると、かなり近い色に仕上がります。

山次製紙所のオリジナルブランド「UKIGAMI」では、浮き紙を使用した商品を販売。人気の茶缶の他、和紙の強さを生かして縫い合わせたカードケースもあります。「UKIGAMI」はOEMの受注も行っていて、和紙は10枚から注文可能。デザインを含めた完全オリジナルの場合は50枚から製作しています。
社内にデザイナーがいるため、オリジナルデザインの浮き紙を使用した、まだ世の中にないものを形にすることにも挑戦してきました。

浮き紙だけでなく、山次製紙所の和紙はすべて手漉きです。熟練の職人が漉桁(すきげた)を動かす時間は、わずか30秒。ひとりで一日約400枚も漉くことが出来ます。しかし、同じ厚みで100枚200枚と漉けるようになるには、3〜4年かかるそう。80歳を超える現役の職人は「毎日が勉強」と言います。
そんな職人たちによって、手漉きの越前和紙は生み出されています。

いいものを作り、わかりやすく伝える。欲しい人に届けるために

伝統工芸士の山下寛也さんは「RENEWが一番、山次製紙所のことを伝えられる」と言います。
RENEWをきっかけに訪れた人は、中の様子を知ることでリピーターとなってくれる。ここを人の集まる場所にしていけば、来てくれた人が誰かを連れてまた訪れてくれる。そんなふうに山次製紙所が広がり、それにつれて越前和紙も広まっていけばと思っているそうです。

いいものを作り、消費者にもっとわかりやすく伝えたいとも山下さんは考えています。
たとえば、お酒のラベルなどで使用されている透かしという技法は、言葉を聞いたことがあっても多くの人はどういうものかはわかりません。もっとわかりやすく見せることで、手に取りやすくなるのではないか。そのために毎回伝え方を工夫し、欲しいと思う人に届くようにしたい。

「他から山次製紙所はどのように見えているのだろう。やっていることが間違ってると思われているなら、自分たちなりに解釈して変えられるところは変えていきたい」
将来を見据え、これからもずっと勉強していくと、山下さんは語ってくれました。

会社情報・お問い合わせ先

文:田中 耿

 

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