福井県越前市を中心に作られている、伝統的な金工品である越前打刃物。昔から受け継がれてきた手仕上げによって、一つひとつこだわりの逸品に仕上がります。

さらに、700年も続く歴史ある越前打刃物は、本物の証として刃物産地としては全国初の伝統的工芸品への指定を受けています。


 

越前打刃物の特徴

 

龍泉2018_刃物越前打刃物の特徴は独特な工法による手仕上げ。中でも、特徴的な2つの技法がこちらです。

    • 包丁の「二枚広げ」技法
    • 鎌などの「廻し鋼着け」技法

 

これらの技法について詳しく解説します。

包丁の「二枚広げ」技法

包丁の二枚広げ技法とは、刃を二枚重ねたまま裏と表からハンマーで叩く方法です。そうすることで、二枚の刃が同じように薄く伸び、手早く作業ができます。さらに、二枚重ねることで倍になった厚みにベルトハンマーの力がちゃんと伝わること、温度が下がりにくくなることでムラができにくくなることがメリットです。

鎌などの「廻し鋼着け」技法

鎌や苅込みばさみに使われる廻し鋼着け技法も、独特な越前打刃物の技法です。地鉄と鋼を鍛接した後、片隅から全体をひし形に潰します。全国の刃物産地では「平置法」が一般的ですが、越前打刃物ならではの柾置法は、刃がより薄くなって研ぎやすく質のいい製品へと仕上がります。


 

越前打刃物の歴史

 

龍泉2018_刃物

越前打刃物の歴史が始まったのは、1337年。京都の刀匠であった千代鶴国安が刀剣制作にあった土地を求めてきたのが府中(元越前市)です。農民のために鎌を作ったことが、始まりといわれています。

江戸時代には、鍛冶株仲間が組織されたり、越前の鎌を愛用していた漆かき職人が全国で打刃物類を売りまわったりといったことで、様々な土地に流通するようになりました。

現在では、昔ながらの手法によって主に包丁や鎌、鉈(なた)、苅込みばさみなどの優れた製品を作っています。


 

越前打刃物の製造工程

 

ナイフビレッジ2018_刃物

越前打刃物の製造工程をご紹介します。

鋼づくりと地鉄づくり

850〜900度に熱した鋼を、必要な大きさに鍛造します。ハンマーなどで金属を叩いて形作ることで、金属組織を強くします。

割り込みと沸かし付け

加熱した地鉄の中央に溝を作って、鋼を入れます。そのまま叩いて、鋼と地鉄をくっつける作業です。

先付けと切り落とし

包丁の先を形作る作業が先付けです。平らな部分を形作り、この段階では製品の2/3の大きさになるように調整します。その後、包丁一丁分の大きさに切り落とします。

中子取り

包丁の柄の部分を作っていきます。

二枚広げ

越前打刃物独特の技法である二枚広げは、包丁の鋼の部分を二枚重ね、裏と表の両方からベルトハンマーで打ちます。二枚を重ねることで、厚みが二倍になりベルトハンマーの圧縮力がよく伝わります。

焼きなまし

加工を行いやすくするために行う焼きなまし。一度、製品を700〜800度に熱した後、自然に冷ますことで金属組織が安定します。

どろ落としと荒ならしと仕上げならし

刃の付着物を取り除いてから、ベルトハンマーで刃の表面をなめらかにしていきます。製品の反りもこの段階で直します。

たち回し

所定の形に合わせて余分なところを切り落とします。現在は、機械化されていることも多いです。

焼き入れ

泥を塗り、800度に加熱後、すばやく水で急冷して焼きを入れます。

焼き戻し

鋼に粘りをつけるために、刃を150〜220度という低温で熱して室温でゆっくり冷まします。鋼が硬いだけでは一方向に力が加わると折れてしまうため、粘りや強靭性を高めるために行っています。

荒研ぎと中研ぎ

目の荒い砥石で形を作り、目の細かい砥石で刃先を鋭利にしていきます。

仕上げ研ぎ

包丁全体を磨いた後に研ぎ幅の部分をぼかし、切れ味を保つために小刃合わせをして完成です。


 

越前打刃物の製作物

 

ナイフビレッジ2018_刃物

越前打刃物の産地では、このようなものがつくられています。

龍泉刃物「カービングナイフ、花梨

龍泉_商品写真

越前打刃物の技術を集結させた包丁を作っている龍泉刃物。新たな分野としてカトラリーやステーショナリーなどのものづくりにも力を入れています。熟練の技術と洗練されたデザインが、世界中でも評価されています。

出典:株式会社 龍泉刃物

山謙木工所「エディットジャパン、藍染め柄(ヒバ材)」

山謙木工所_商品写真

和包丁の柄の部分を作っているメーカーです。100年の歴史のある老舗の企業です。独自の設計による特殊構造を開発するなど、時代に合わせて技術を磨き続けています。

出典:株式会社 山謙木工所