日本六古窯に数えられる越前焼。中世から現代まで生産が続いている代表的な6つの窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)の1つに数えられています。
越前焼は、壺・甕・すり鉢など、生活雑貨としての役割だけでなく、経筒や骨壺などにも使用されていました。その歴史は古く、平安時代末期から焼かれていたと言われており、現在までに発見された古窯跡は約200基以上にものぼります。
越前焼は室町時代後期に北陸最大の窯業産地として発展しましたが、水道の普及や磁器製品の広まりにより、需要が一気に落ち込んだ時期もあります。その後、越前焼は衰退の一途を辿るものの、戦後、越前陶芸村の建設によって全国から陶芸家が集まり、再び注目されるようになりました。
現在は、焼締めの伝統を生かしつつ、越前粘土の特徴を活かし薄造りの商品の制作等新しい作陶も試みられており、進化を続けている伝統工芸品とも言えるでしょう。
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越前焼の特徴
土の柔らかな風合いで、温かみのある作品が多い越前焼。材料である土には鉄分が多く含まれており、強度があります。
その材質のおかげで、表面が赤黒や褐色の焼き上がりとなり、熱でしっかり土が焼き締められるのです(焼締め)。その結果、水漏れしにくいことでも有名です。
また、釉薬が使用されない特徴もあります。越前焼が焼かれる際に薪の灰がかかり、それらが溶け合って、自然釉ができます。そのおかげで飽きが来ない茶褐色に焼き上がり、器に浮き出る自然釉は越前焼の魅力でもあるのです。
そもそも焼物とは?
焼物は、粘土を原料に焼かれたものを言います。(陶磁器と呼ばれることも)焼物は、土器、炻器、陶器、磁器の4種類に分けられます。ちなみに越前焼は陶器と磁器の中間にあたる炻器に分類されます。
主な違いは、原材料や焼き方の違い、焼き上がりにあります。
焼物の種類 | 原材料 | 焼成温度 | 性質 | 吸水性 | 透光性 | 釉薬 | 例 |
土器 | 陶土 | 700〜800℃ | 脆く壊れやすい | ◯ | × | × | 縄文土器 |
炻器 | 陶土 | 900℃ | 陶器と磁器の中間 非透明である点で磁器と区別される 水分を吸わない点で陶器と区別される |
× | × | ◯/× | 丹波焼 備前焼 越前焼など |
陶器 | 陶土 | 900〜1200℃ | たたくと鈍い音がする | ◯ | × | ◯ | 美濃焼など |
磁器 | 陶石(石英、長石など) | 1300〜1400℃ | たたくと剣属性の高い音がする | × | ◯ | ◯ | 有田焼 九谷焼など |
越前焼の歴史
越前焼の起源は約1,300年前にまでさかのぼりますが、産地としての始まりは約850年前の平安時代末期。当時は主に甕や壺、すり鉢といった日常雑器を中心に生産していました。
中世、越前海岸に近い立地を生かし、北前船によって北は北海道、南は島根県と日本海沿岸各地に運ばれました。そして北陸最大の窯業産地にまで発展したのです。
その後、地元の古窯址研究者・水野九右衛門らによって発掘調査と研究が進められます。さらに越前陶芸村が作られ全国から陶芸家や観光客が集まるようになったことで、みごと復興を遂げました。
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- 1948年・・・六古窯のひとつとして数えられ、全国に知られる焼物となる
- 1965年・・・福井県内で創られる焼物の名称が「越前焼」に統一される
- 1986年・・・伝統工芸品に指定される
近年では、伝統的な技術を継承するだけでなく、新しい越前焼の創作に意欲的に取り組まれています。
越前焼の製造工程
越前焼きは完成品の形も多種多様で、様々な技法を用いて製作されます。ここでは、越前焼の伝統的な「越前ねじたて成形」の製造工程についてご紹介していきます。
①底作り
越前焼には、「地元の土」が必要不可欠。まずは土を混ぜ、粘土をつくる「採土」を行います。採土は、
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- 青ねば
- 赤べと
- 太古土(たこつち)
と呼ばれる3種類の土を混ぜ合わせていきます。その後、次の工程を経て、素材である土が完成します。
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- 粉砕・混練・・・土の粒子を均一にするために、不純物を除去する
- 菊練り・・・しばらく寝かせて粘り気を出す
土の準備が出来たら、木の台の上に底になる部分の土を据えて底土をつくります。
②ねじ立て
越前焼特有の技術でもあるのが「ねじ立て」。太さ5~10センチメートル・長さ40センチメートルの「より土」をにぎり持ち、底土にひねりつけていきます。底土の周りを回りながら一巡し、これを繰り返しながら何段も積み重ねていきます。この方法を、「輪積み形成」と言います。
③はがたな伸ばし
円筒状に粘土を積み上げた際に、外側にできた継ぎ目は「はがたな」と呼ばれる鏝(こて)を用いて、表面をならします。器の下部ができた時点で一旦乾燥させ、上部の重みに耐えられるようにします。その後、再度「ねじ立て」と「はがたな伸ばし」を繰り返していきます。
④口づくり
器の口を作ります。水で濡らした木綿布を両手で押さえるようにしながら土を伸ばし、口の部分を整えます。このとき指の使い方によって口の形を変えることができます。
⑤焼き
形を成形し終わったら充分に乾燥し、作った器を窯に入れて1200~1300℃の温度で焼き上げます。非常に高い温度で焼き上げていくため、水漏れしにくく丈夫な製品ができるのです。
越前焼の製品
越前焼は、素朴な味わいで飽きがこないデザインのため、長く愛用できる作品が多いのも魅力。越前焼の製品をご紹介していきます。茶碗や酒器、コーヒーカップなど、生活の一部に越前焼を取り入れてみてはいかがでしょうか。
豊彩窯「ぐいのみ(白・青)セット」
若手陶芸家である吉田雄貴さんが制作した越前焼の作品。季節感を持った自然な色合いを再現しているものが多く、温かみのある作品が特徴的です。
出典:豊彩窯 吉田雄貴
風来窯「粉引冷酒盃セット うさぎとかめ」
動物や子供、自然をモチーフにしたものやシンプルな普段遣いの食器まで幅広い作品を作っています。日々の暮らしの中で使っていてホッとしたり、自然や生き物が共生しているこの世界の素晴らしさに触れたりできるものを、という思いで作っていると語ってくれます。鳥や動物、物語の世界を形作った作品などを生み出しています。
出典:風来窯 大屋 宇一郎