越前漆器

井上徳木工

井上徳木工

〜漆塗りまでも計算しつくされた、繊細な技術で作り上げる木工製品〜

漆器の角物木地を製作する「井上徳木工」

漆器の一番ベースとなる「木地」を作っている井上徳木工は、越前漆器の形を形成する角物木地師の工房です。

角物とは、お椀や丸皿などの丸物に対し、重箱やお盆などの角のあるものを指します。特に井上徳木工は、ギフトや贈答用の高級木製品である、書物を入れる文庫や器をのせるお膳などを中心につくっています。

もともと、一般家庭の調度品をメインに製作してきた井上徳木工は、一つひとつを丁寧に作るものづくりを行ってきました。だからこそ、現在も高度な技術を生かした木地を製作しています。

小さくてシンプルな木地をつくる繊細な技術

井上徳木工

井上徳木工の強みは、大きく分けて次の3つ。

  1. 機械では測れないコンマ数ミリを目で見て触って確認し、木目も計算して寸分の狂いもなく木のパーツを作り上げる指物技術
  2. バラバラな木の素材を組み合わせて一つの製品をつくるという、知識と経験が必須な技
  3. 産地では珍しい曲げわっぱの製作を取り入れるなど、伝統産業だけではなく新たな製品にどんどん挑戦する姿勢

井上徳木工では、繊細な技術を生かしたシンプルな角物漆器をつくり出します。0.1mmの狂いがあっただけでも形が崩れてしまうため、シンプルだからこその難しく細かい技術が必要です。

均一な素材ではない木を、目で見て手作業で組み立てる。角度のついた商品を、パーツから正確に作り上げる。大きいものであれば1mmのズレは許容範囲ですが、小さいものにとっては大きなズレです。

そんな小さくてシンプルな形のものを、ずっと同じクオリティで均一に作り続けることは、まさに職人の技。

タモやホウ、ベイヒバなど様々な木材を扱っているため、それぞれの木の特徴を把握した上で木地を手掛けます。乾燥にかかる時間や木の反り具合、最適な湿度などを考慮してつくる技術は、経験と知識が必須です。

多種多様な木を取り扱ってきたからこそ、複数の種類の木を組み合わせて一つの木地をつくる技術も持っています。面によって素材が違う指物をつくる技術は、井上徳木工の試行錯誤の結果です。

升

漆器の木地だからこそ、塗りを前提の設計もお手のもの。材料の薄さや角度を限界まで極めることもできれば、どの接着剤を使うかを考慮した設計も可能です。

産地では少ない曲げわっぱも井上徳木工で製作しています。木のパーツをお湯で煮て、円や楕円の木箱をつくり上げます。

曲げわっぱ

接着を「こくそ漆」という漆で接着する方法も漆器の産地ならでは。井上徳木工の代表・井上さんは、漆器を知るために下地や塗り、蒔絵、沈金なども実際に経験しています。

漆の扱いを知っているからこそできる漆での接着。木地職人が漆を使った接着まで一貫して行うことも珍しいです。漆の接着は、ボンドと比べると水に強くて丈夫な仕上がりになる上に自然にも優しいのが魅力です。

井上徳木工と産地のエピソード

井上徳木工

産地では分業制なので、漆器の木地を担当して技術を極め続けてきました。そんな中、鯖江にあるセレクトショップ・ataWのデザイナー・関坂さんと出会い、工房のサンプル場を見せることに。

デザイナーたちが、工房にあるたくさんのサンプルをみたときに「すごい」と声を上げている様子に井上さんも感銘を受けました。

それをきっかけに、産地の外側の人たちとの交流が増えました。これまでの伝統的なカタチにこだわらず、様々な要望に挑戦することで技術もどんどんと磨かれます。

従来の重箱やお盆だけでなく、今のライフスタイルにあった新たな製品にもどんどんと挑戦していきます。外の人たちから見ると、この産地には実はすごい技術がたくさんある。

そんな職人たちが技術を競い協力しあえる産地にしていくことがこれからの産地が目指す形とのこと。そして、井上徳木工自身が、いろいろな人と接点を持つことで産地の仕事の窓口に。産地の職人の活躍が増えるような役割も担いたいと語ってくれました。

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