越前漆器

セキサカ

「昔ながら」から外れて独自の道を進む、漆器の産地に新しい風を吹かせる食器メーカー

 

漆器の産地で創業300年の食器メーカーがいま変革期を迎えています。12代目として会社を継いだ関坂達弘さんは、会社名を関坂漆器から株式会社セキサカに変え新しい道を進み始めています。

株式会社セキサカの主な仕事は業務用食器の企画・製造・卸です。創業当時は、多くの職人を抱えて木製漆器を製造する会社でした。しかし、高度経済成長とともに業務用漆器の技術が発展する中で、耐久性や機能性の高い製品を短納期で量産できるプラスチック製の食器を製造するメーカーに移行しました。現在は、自社では工場を持たずに、提携する工場や職人に外注して商品を製造するファブレスのメーカーとして、介護施設や学校給食、機内食で使用されるような業務用食器を製造するようになりました。

業務用向けの食器は用途が特定されているものが多く、デザインよりも、価格や量、機能性が重要視されています。スタッキングができなければいけない、サイズの細かい指定があるなど、デザインを活かしにくい世界。デザインの業界から業務用の世界に入った関坂さんにはジレンマがありました。

デザインを活かしたものづくりをしたいというその一心で、会社としての方向性を転換。アイデアや企画をメインとして、デザイナーと手を組み新しいことにチャレンジし、漆器の産地に新しい風を吹かす会社に移り変わりました。

 

株式会社セキサカでは、現在3つの柱を軸として活動をしています。

  • 従来の形態にとらわれない、チャレンジのOEM
  • 産地の技術を新しい視点で提案するSEKISAKAのブランド
  • 産地に新しい風を吹かせるお店の運営[ataW]

一つずつ、ご紹介します。

 

従来の形態にとらわれない、チャレンジのOEM

セキサカの業務内容の2~3割は現在もOEMの仕事が占めています。既存のものをベースに仕様を変えて製造する製品やオリジナルでゼロから型をおこす製品、また木製漆器のOEMや漆塗りの依頼まで幅広くOEMを請け負っているのが特徴です。

メインとなるのは移出成形を利用したプラスチック製の業務用食器のOEM製造です。例えば、 学校給食や機内食用の食器を製造しています。基本的にはクライアントの指定のもと、形にする仕事であり、500〜1000という単位が最低ロットとなる量産前提の業務用食器が主となっています。特に機内食であれば毎年同じ形が使われるため、定期的に5000から10000の単位で発注をいただくそうです。

基本的なOEMの根底は、お客さんの要望にどう応えられるか。
セキサカがデザインに特化している事もあり、一般的には行わないような仕事の依頼も増えました。

繋がりのある作家やメーカーからの仕事も多く、普段は漆を塗らないものに塗る、既製品に漆を塗りたいという相談を受けることがあります。モノの素材や特性に合わせてどう処理して、どう塗るか。他の会社では受け入れてもらえず、普段やらない下処理を会社で行ったこともあるそうです。その後の漆塗りでは、職人さんによっては特殊すぎる仕事のため嫌がれて断られたことも。

通常の仕事と比べると、OEM業務はお客さんの要望をどう形にするかの試行錯誤が求められ、時間も手間もかかります。それでも関坂さんからするとOEMから学ぶことが多いと言います。「大変だけど、OEM案件を通して様々なことにチャレンジができ、新しい学びや気づきがある。」

新しいことに挑戦したいデザイナーや作家にとっては、声のかけやすい会社かもしれません。セキサカは、他にはない独自のベクトルで活動を続けています。

 

産地の技術を新しい視点で提案するSEKISAKAのブランド

セキサカではこれまで培ってきた製造背景を使いつつ、外部のデザイナーとの協働で現代のライフスタイルにあったプロダクトを提案するブランドを立ち上げました。イギリスのデザインスタジオIndustrial Facilityとの協働で生まれた伝統的なお椀の形をモチーフにした多目的容器”STORE”や、OEMで手がけてきた機内食用トレーを再構築したトレー”PLACE”など。現在までに4つのシリーズが生まれており、現在も様々なデザイナーとプロジェクトが進行中です。

このブランドをデザイナーと進める際、一つの条件を設けています。それは、広義での漆器に関連する技術を、新しい視点で活用することをデザイナーにお願いしています。

「産地内の高い技術を持つ職人と、デザイナーをコラボレーションさせて、新しいものが生まれて、双方にとって新しい気づきが生まれて欲しい。」と、関坂さんは語ります。

しかし、このブランドを立ち上げ、進める中には困難もありました。会社はプラスチックの食器製造がメイン、関坂さんの会社には漆塗りに関わる職人や木工職人との繋がりがほとんどありませんでした。その上、河和田地区の職人さんは デザイナーに対して良い印象を持たない人もいました。

それでも進めたい。自分から直接職人さんに掛け合ったり、理想の加工ができる職人を紹介してもらったりと、どうにか実現に近づきます。もともと会社としては取引がなかった職人とも自分きっかけでやりとりをするようになった。そのやりとりにもとにかく気を配り、一方的にデザインを投げかけるのではなく、産地にデザイナーを呼んで丁寧に顔合わせや説明をしているそう。その功もあり、今では信頼を寄せてくれている職人も増えました。

人と人を繋ぐことこそが、自分たちのメーカーとしての役目なのだとも言います。

「メーカーなので、お客さんと職人、デザイナーと職人の間にいる。いかにして職人さんの技術を良い形にできるか。それでもって職人さんに面白がってもらわないとやってもらえないし、そこは気を遣っている。デザイナーの中には無理難題を言ってくる人もいる。でも、できないからといってできないって言うとそこで終わってしまう。職人さんのところに何度も行って、どうしたら形にできるかを相談して、現実的にできるところを探ることも大事。職人さんとコミュニケーションを重ねることで良い物になっていくと思う。」

「産地の職人はどんどん高齢化している。いついなくなるかという危機に瀕している。自分たちが生き残るためにも、こちらが仕事を作って、若い人が職人さんの技術を継いで仕事してくれる環境を残していかないといけない。」

SEKISAKAのブランドは現在もいくつかのプロジェクトが進行中。今後も新しく魅力的なプロダクトが発表されていく予定だそうです。

 

産地に新しい風を吹かせるお店の運営[ataW]

ataWはセキサカの運営するセレクトショップです。SEKISAKAの商品だけでなくオリジナルのプロダクトの販売、それ以外にも、国内外のデザインプロダクト、洋服、日用品、家具、音楽CDを展示・販売しています。ストーリー性のある商品や作品が多くセレクトされた、鯖江市河和田地区の入り口にあるお店です。

お店は展示のように利益を追求せず、商品を紹介をする機能を持たせたい、と関坂さんはいいます。

お店をはじめたきっかけは、もともと両親が「与十郎」というお店を運営しており、お店があったから。喫茶店を併設した漆器を中心に販売するお店でしたが、関坂さんが福井に帰ってきた当時はお店として利益も出ておらず、経営内容もよくなかった。経営改善のためにもお店を変えなければならない。小売店で販売経験もない。まさに0からお店の運営を始めました。

いざ始めようとしましたが、業務用向けの食器を製造していたメーカーなので小売向けに売る商品がありませんでした。関坂さんは、やるのであれば別の方向に振り切る必要があると感じていました。「振り切るのであれば、ものづくりをする上でいい影響や刺激を与えてくれるものを集めて紹介がしたい。」この思いからセレクトショップとしての方向が決まります。

お店の名前は前店舗名の「与十郎」の「与」を「あたう」と読んでataWに変更。地域の「内」と「外」を繋ぐ窓(window)のような存在でありたいという思いが大文字の「W」には込められています。

お店に置かれた商品の多くは、知り合いや友人のデザイナーのものや、昔から自分が好きだったもの。そのセレクトや発注はすべて関坂さん自身が行っています。

「お店は、特定の層に向けてというより、年齢層も幅広い多種多様な価値観を持つ人たちに来てもらいたい。
ものづくりの町とリンクしているところもあって、独自の視点と手法で作られたデザインだったり、機能のないアートのようなものだったりとか。いろんな角度で広く浅く紹介できたらなって。
他にも、ものづくりに携わる人にもきてほしい。福井の中でなかなか出会えないものにここで出会って、ものづくりをする上で面白い視点や気づきを得て欲しい。」

また、ataWでは不定期に企画展として、「ataWlone」という展覧会も行っています。ミラノサローネという海外の展覧会からもじった企画。これも色んな活動をしている作家やデザイナーを紹介するという目的で、今後も力を入れていきたいといいます。

「直接、ものを見て買ってもらうことが一番説得力がある。置いてあるものは実際に見てもらいたい。」

 

フットワークの軽さを生かして

セキサカの今後の展望

セキサカは、伝統にとらわれないからこそ、できる動きがあります。関坂さんが継いだことで会社は、「昔ながら」から外れてデザインやアートを取り入れられる自由さを手に入れました。

同時に時代に合わせて変化していく産地。世代が自分たちや若い人たちに移り変わり、若手の職人が口を揃えて「なんでもやらなければいけない」と言うようになりました。

この産地の盛り上がる空気の中で、関坂さんは新しい展望を描いています。

「いつかは海外展開をしたい。日本だけでやっていると、どうしても日本だけ見てしまう。今の工芸や地域性にフォーカスが当たるのは日本国内の小さい動き。河和田が脚光を浴びるのはいいことなんだけれど、でもやっぱり世界は広いし、海外で売っていけるメーカーになっていきたい。SEKISAKAのプロダクトも、ラインナップがしっかりしてきたら海外の展示会で発表したい。今はまだその準備段階。」

株式会社セキサカは地域の窓として、これからもまだ見ぬ風を産地にもたらします。

▼会社情報・お問い合わせ先

・企業名:株式会社セキサカ
・住所:〒916-1223 福井県鯖江市片山町3-53
・電話番号:0778-65-0009
・メールアドレス:mail@sekisaka.co.jp
・サイトURL:http://sekisaka.jp

・店舗名:ataW
・住所:〒915-0256 福井県越前市赤坂町3-22-1
・電話番号:0778-43-0009
・メールアドレス:info@ata-w.jp
・サイトURL:https://ata-w.jp/
・従業員数:5名
・設立:1701年
・問い合わせ方法:電話もしくはメール

(文:深治遼也)

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